がくちょうです
年末なのでブログ書いてます。
私はこれまでマーケティングを広く抽象的な概念として扱ってきました。
とても拡大解釈すると、マーケティングは人間の社会活動そのものとも言えると思っています。
最初はマーケティングを「売る部分」だけに注目していましたが、徐々に
「価値を設計する⇒伝える⇒広める」
という3段階でとらえるようになっていき、
最終的には
「通貨もしくはその他のエネルギーを媒体とした循環システムをどのように設計運用するか」
という考え方になってきています。
そういう意味で、現在コミュニティを運営しているのはある意味最先端のマーケティングを運用するチャンスでもあり、小さな経済圏やエコシステムを構築するという試運転にもなっています。
そして、一定の成功を収めることができました。
今日はその話をします。
マーケティングの「売る」の部分
私はリクルートにいた時に営業とWEBマーケをやっていたので、基本的にはマーケティングとは「売る」ことだと思っていました。
いかに顧客にサービスの魅力を伝えて売るか?
という視点で考えると、マーケティングとは「セールスコピーライティング」と「セールストーク」の大雑把に2つに分類できました。単純に言うと文章で売るか話して売るかだけの話です。
実はセールスには一定の型みたいなものがあります。
勝ちパターンは人によって全然違うのですが、最終的に構造でとらえると全員一緒で、
相手の問題点を把握し⇒自社の商品で解決する方法を提示し⇒ほかのサービスでは解決しないことを理解してもらい⇒今すぐに買うべきだという気持ちになってもらう
という流れになります。
セールスコピーライティングは、相手とのコミュニケーションが取りづらいので、上記の流れを先に想定しておいて、文章で表現していくという作業です。
難しいのは「感情を動かす文章が書けるか」です。これは半分天性のものなので、やはり読んでいて「あまりにひきこまれる」ような文章を書ける人間は売り上げの桁が変わる印象があります。
私はその点で言うと、「基本の型」が営業経験によって仕上がっていたことと、感情を動かす文章が書ける才能が「中の上」くらいあったので、すぐに「売る」という部分のマーケティングについては覚えることができました。
マーケティングの「価値を設計する⇒伝える⇒広める」という構造について
「売る」の部分がある程度わかったので、私は少しだけ範囲を広げてみました。
そもそも、サービスを創るところからもマーケティングといえるのではないか?という視点で見てみます。
そうすると、大きく3つに分類できました。
価値を設計して⇒それを顧客に伝えて⇒効率的に広めていく
という流れです。
このタイミングで重宝したのは「マーケティングファネル」というフレームワークです。
逆三角形のやつですね。(知らない人は自分でググってください)
マーケティングファネルの考え方では、どうやってたくさんの人に商品を認知させ、そこからコンバージョンに落とし込んでいくか?というのをきわめて数学的に計測していきます。
何人が見て、何人が買ったのか?などがWEBではすべて計測可能なため、CTR(クリックした率)やCVR(決済した率)というレートを管理していきながら、予算をコントロールしてインプレッション(何人に見られたか?という数)を増やすだけです。
大雑把に言うとWEBマーケティングの指標は「予算」「インプレッション」「CTR」「CVR」「CPA」の5つくらいしかないと思っておけばいいでしょう。慣れれば誰でもできますし、そんなに難しくありません。
ただ、これでは伝える(主にCVRの部分ですね)と、広める(主にインプレッションの部分です)の2つしか理解することができませんでした。
そもそもの根本的な部分である「価値を設計する」について、有効なフレームワークは簡単には見つからなかったのです。
新しい価値を設計できるか?
新しい価値を設計するフレームワークがあれば最高だと思いませんか?
それはイノベーションの源泉に触れるようなものだし、必ず当たる新規事業を創れるようになれば、無敵の技術のような気がしました。
実践と研究を重ねるうちに、見えてきたことがたくさんあります。
たくさんありすぎて一言にはまとめられませんが、大雑把に言うと
「誰もやっていないことをやってはいけない」
という事です。
イノベーションとは需要を創り出す作業ではありませんでした。
いや、イノベーションには2つの要素があったと言ったほうが正しいかもしれません。
一つは「技術創出」で、もう一つは「社会最適化」です。
そして、ビジネスサイドで言われているイノベーションとは、主に「社会最適化」のことです。
社会最適化とは、「技術」によって人々の生活習慣が変わってきている部分に、プロダクトを合わせるような動きになります。
スマホが普及しているので、他でやっていたことをスマホでできるようにする
などが分かりやすい事例でしょう。
アベマTVはテレビをスマホで見れるようにしているし、メルカリは不用品売買をスマホでできるようにしているわけです。
そして、気づくと思いますが上記のようなアイデアは「アイデアに価値があるわけではない」のが特徴です。
社会最適化するサービスは、アイデア自体は非常にシンプルで誰でも思いつきます。そういうフィールドで重要なのは、「経営力」です。
圧倒的な資金力や、サービス改善のスピードなど、つまり「ひとものかねじょうほう」を集めて回す能力の方が重要であり、そもそも「何をやっているか」という勝負ではないのです。
誰でも想像できるサービスを、だれも想像できないくらいやり切る勝負の仕方になります。
逆に、技術創出の部分で勝負するなら、「人に依存」する形になります。法人営業力や技術者の雇用育成などの属人化した要素が価値の中心になるため、少人数高単価体制で誰にも知られずに儲かっているような状態が理想です。
ただし、技術はあくまでそれ自体に価値があるものではありません。社会全体の動きを見通して、「どこでトップランナーになるのか」を決めていくのは重要だと思います。
しかし感じるのは、「どんな技術でも先端にいれば必ず転用できる」という事です。一つ一つのサービスにこだわるのではなく、技術転用を常に意識しながら、できるだけ息の長い業界を見つけていくべきでしょう。
究極言ってしまえば、事業というのはサービスを創ることではなく、人を育てることです。
私は何年もかかってやっとそのことに気づきました。
「新しいものを創る」こと自体が目的になってはいけません。
自分が心からコミットできる領域を見つけ、ユーザーの気持ちを忘れず、丁寧に価値提供していくことが、経営と心の豊かさを両立させてくれることだと信じます。
そういう意味で、私なりのキーワードを洗い出すと、
● 新しいことを学ぶのって楽しいよね
● 成長を実感できると嬉しいよね
などがあります。
新しいことに興味を持ち⇒一歩踏み出し⇒学び⇒成長を実感できる
という環境を作っていきたいです。
通貨もしくはその他のエネルギーを媒体とした循環システムをどのように設計運用するか
さて、話がだいぶそれましたが、最終的にマーケティングはこういう視点に行き着いています。
一つのエコシステムや経済モデルを創るような視点ですね。
サービスというのは所有や購入から「利用」に変わってきています。
全てのサービスが「販売」から「商品を基軸としたコミュニティ形成」にゆるやかに変わっていくでしょう。
そこでは、「コアバリュー」をインセンティブにユーザーを流入させ、ヒエラルキーを浸透させることで共同の幻想を作り上げるといった技術が必要になります。
その場合は、どちらかというとヒエラルキーと共同幻想の方が重要度が高く、コアバリューは複数に分かれていても問題ありません。
アマゾンプライムに入会する理由は、ビデオでも即日配達でも構わないわけです。
先日お金2.0の書評でも書きましたが、経済システムには
1)報酬が明確である(インセンティブ)
2)時間によって変化する(リアルタイム)
3)運と実力の両方の要素がある(不確実性)
4)秩序の可視化(ヒエラルキー)
5)参加者が交流する場がある(コミュニケーション)
の5つが必要だと分析されており、これは非常に秀逸だと思います。
そして、HOOKEDの4つの要素
A)トリガー
B)コスト
C)リワード
D)インベストメント
を組み合わせると、「インベストメントの積み重ねがそのままヒエラルキーに繋がっているような設計」が必要ということになります。
つまりこの時代のマーケティングは、「何をインセンティブにすれば刺さるか」と同じくらい、「何をインベストメントにしたヒエラルキーを創るか」が重要だということです。
最後に
さて、では「教育」のシーンで何をインベストメントにするべきでしょうか?
卒業証書でしょうか?
何かの学習バッジでしょうか?
これは、学校にいたころを思い出すと見えてくるものがあります。
私は思うのです。
教育とは、教えるのではなく、本質は「学び」だと。
つまり主体は学ぶ側にある。
重要なのは「学んだ」という感覚の蓄積なのです。
では、学んだという感覚はどうすれば蓄積できるのでしょうか?
それは、「アウトプットと思い出」ではないかと思うのです。
学びは極めてあいまいなものです。そして本来は卒業などなく、一生を通じて学び続けるものです。
そこで最も蓄積していくものは、「学んだ思い出」なのではないでしょうか?
もう一つ踏み込むならば、「ともに学んだ思い出」だとおもうのです。
共同実践をインセンティブとし、思い出がインベストされ、学んだ証がヒエラルキーになるような教育の場所を創るのはどうか、と私は考えています。
つづく