トリイ学長です。
私はIT業に関わってからもう10年目になります。
結構長い。
その間、マッチングサービス、メディア、コミュニティ、SaaSなどなど、ほぼすべての種類のITプロダクトを開発から運営までやってきました。
最近はメディアと改めて向かい合っているのですが、そこで思うのが
情報の価値って何だろう
という事です。
ということで今日は、IT業の中でも代表的なサービスモデルである「メディア」について考えていきたいと思います。
情報の価値とは何だろう
みなさんは情報の価値とは何か、考えたことはありますか?
情報には、どんな価値があるか。
私はこれまでITに関わる中で、情報の価値としては
速さ⇒速報など、最新性が価値になる
深さ⇒分析など、専門性が価値になる
などがあり得ると考えてきました。
事実、トレンド系のサイトなどは「速さ」で勝負することになるし、特化型サイトでは「深さ」で勝負するというのが基本の考え方になります。
さらに、
多さ⇒情報量の多さが価値になる
というのもあり得ます。
とにかく大量の情報を掲載することで、それ自体が価値になる。これも大手ポータルサイトなどでは戦略として採用されていると思います。
これは、私が2017年までにITに関わる中で考えてきた「メディア=情報業における戦略」でした。
しかし、2018年になって私は「提供者側の戦略性」ではなく、「受け手側の価値」で考えるようになりました。
ここで大きなブレークスルーが起きた気がします。今日はその話がメインです。
本当に情報に価値などあるのか?
私は、これまで勝手に「情報には価値がある」と考えてきました。
情報の価値とは、言い換えると「有用性」です。
つまり、使える情報という意味です。
例えば、地下鉄の乗り換え方法が分からない。
この時に、「適切な地下鉄の乗り換え方法」は情報として有用性があります。
何か目的があって、その目的の達成のために必要となる情報には、有用性があるはずです。
私は情報の価値を考える時、常にそういった「有用性」を前提に考えてきました。
しかし、2018年になり、私は「経済指標」という単一の評価軸を抜け出し、世界を広い目で見られるようになりました。
その結果、気づいたのは、「人生に目的などない」ということです。
つまり、人間は生きているほとんどの時間を「目的が無い状態」で過ごしており、その中の目安で1%~5%くらいの時間だけ、「何らかの目的を持っている状態」なのです。
では、目的が無い状態の人間に、「有用性」など存在するのでしょうか?
答えはNOです。
言い換えれば、人間が生きているほとんどの時間、目的が無ければ有用性も存在しないのです。
ではなぜ、目的も無く人は情報を求めるのか?
「目的が無い状態(以降オフと呼びます)」の人間にとって、情報の価値とは何なのか?
オフの人間には、どういった情報が必要とされているのか?
そうやって考えた時に、見えてきたのが「メディアの未来」です。
メディアはどうエンタメ化していくか
簡単に言えば、全ての情報が「エンタメ化」していくことになります。
オフの人間にとって価値があるのは「有用性」ではなく「エンタメ」です。
言い換えると、人生の時間をいかに「有意義に」潰せるか?という事です。
ではさらに「エンタメ」とは何か?について考えてみましょう。
エンタメ性の高いメディアに必要な要素は「参加できる」こと
まず一つ、エンタメ性の高い情報とは「参加できる」という要素があります。
ITの普及によって、今はすべての人が「情報発信側」になりました。情報を発信し、自分の意見や考えを人に評価してもらうという行為は、人間の欲求を満たします。
「参加できる情報」を提供することによって、周辺の人に自分の意見やアイデアを発信するきっかけを与えることができ、それ自体が情報として価値になるのです。
例えばインフルエンサーの方々は、あえて「物議をかもしそうな意見」をソーシャルメディアなどで発信することで、「その周辺にいる人が自分の意見やアイデアを発信するきっかけ」を提供しています。
彼らがいなければ、意見を発信する機会が大幅に減少します。
つまりインフルエンサーは「参加型メディア」を運営することで、エンタメ性の高いメディアを実現しており、事業メリットを得ているのです。
こういった構造的な視点でとらえると、参加型メディアはインフルエンサーの方々が採用している手法以外にも、様々な可能性があることに気づくはずです。
カギとなるのは、「情報を受け取る側が、受け取るだけではなく、それに伴って自分の意見やアイデアを発信しやすくなる」という要素をいかにメディアに搭載するか?という部分です。
そういう目線で色々なものを見てみると、
- ライブ配信中のコメント機能
- ニコニコ動画の弾幕
- ケータイ大喜利
- テレビ番組の放送中にツイッタータグでツイートを拾う
- ラジオ番組でリスナーから曲のリクエストをもらう
など、様々な応用できる事例が存在します。
エンタメ性の高いメディアに必要な要素は「習慣になる」こと
次に、習慣化です。
これは言い換えると、「質より量」と言ってもいいでしょう。
目的のある状態の人間にとっては、「量より質」です。オンの人間には、無駄な情報を省き、できるだけ短い時間で濃厚な情報を得たいというインセンティブがあるからです。
しかし、オフの人間にはそういったモチベーションや判断基準はありません。
その場合、一つひとつの情報の「質」はあまり問題にならないのです。
大切なのは「習慣になる」ことであり、そのためには量が重要です。
読者や視聴者が
「よーし、見るぞ」
「この内容を見たい」
と意気込んでみるようなメディアは、習慣化しません。
理想は
「つい見てしまう」
「特に理由も無く見る」
という状態を実現することです。
この辺の考え方は、下記で紹介したhookedを読むべきです。起業を志しているなら全員必読の書籍です。
仕入れから編集とUXの時代に
情報に有用性が求められていた時代には、情報の仕入れ自体が重要になります。
「良い情報を拾ってくるスクープ記者」
「世界中にいる優秀なレポーター」
「有名人や著名人をアサインするコネクション」
などが仕入れ力の代表例でしょう。
しかし、「参加できる」「習慣化する」という要素にとって、仕入れ力は重要ではありません。(むしろ強力な仕入れ力は参加を阻害するかもしれません。)
むしろ、どこにでもある情報を「編集」によって参加しやすくしたり、「UX」によって習慣化しやすくしたりする力の方が、求められていくことになります。
メディアの勝ち筋は
量産体制を敷くために低コストの仕入れルートを確立し、編集とUXにコストを投下することでエンタメ性を極限まで高めていく
という形になっていくと考えています。
ここで注意するべきなのは、「参加者が増えるほどUXが悪くなっていく傾向がある」ということです。メディアは最終的にはROMしやすいのが重要ですが、エンタメ性を高めるために「参加できる」という部分を追求していくと、UXが悪くなってしまいROMが習慣化しないという事が起こりがちです。
ここを、強いUX意識を持って改善していくメディアが伸びていきます。
私も頑張りたいところです。
では今日も精進しましょう。