トリイ学長です。
流行ってますよね、オンラインサロン。
私も「オンラインコミュニティ」っぽいサービスでいうと、趣味でかれこれ3年以上運営してきまして、2017年は10個くらいのオンラインサロンに入ったし、友人のサロンにアドバイスしたり、立ち上げを手伝ったりしてきました。
自分が立ち上げたファーストペンギン大学も、「日本一コミュニケーションが活発だったサロン」としてDMMさんから表彰されたりと、たぶんオンラインサロンというサービスに関しては国内でも5本の指に入るくらい詳しいと思います。
で、私は自分が立ち上げたオンラインサロンは、2018年に入ってから相当サービスとしてピボット(事業のバリューを何というかすこーしずらすけど本質は変わらないって感じの変更のこと)しました。さらに、7月からもう一段回ピボットします。
というわけで今日はその辺の経緯を踏まえて「オンラインサロンって何なの」という話をする。
ビジネスモデルとは何か
その前にビジネスモデルとは何か、という話を簡単に言っておくと、私はビジネスモデルを考えるときに常に「なんのコストを代替したのか」という考え方をするようにしています。
これはBtoBでもBtoCでも変わらなくて、結局は個人または法人が払っている「何らかのコスト」を、自分のサービスに持ってくることでビジネスというのは成立します。
そこで、今回は「オンラインサロンというサービスが、だれのどんなコストをリプレイスしているのか」という視点で分解してきます。
パターン1:オンラインサロンは中小企業のリプレイスである
まず、一つ目のパターンがこれです。
これはインフルエンサーが運営しているサロンに多いと思います。
時代背景として、そもそも「複数の収入源を持つ」「自分で稼ぐ」「副業や複業をする」「フリーランス化」というのが、大雑把に言うと働き方の自由化という流れで普及していっています。
そこで、一つの会社に所属しているだけだと「働き方の多様性が担保できない」という危機感を、オンラインサロンが担保する形になっています。
代表例は、一人の強力な影響力を持つインフルエンサーがオンラインサロンを立ち上げ、そこで動きまくって色んな仕事を生み出し、それをオンラインサロンのメンバーが拾いまくっていくという形で、つまり社会全体で見ると「企業で働いていた労働力」というコストがオンラインサロンにリプレイスされている形です。
今まで「企業で働く」という部分に投下されていた個人のコスト(時間やエネルギー)が、時代背景の圧力によってオンラインサロン上に移動していく感じですね。
ある意味、企業は「人材獲得」という視点で、オンラインサロンが競合してくことになります。
では、個人側はなぜお金を払うのか、どんなコストとお金を交換しているのか、という話です。
個人にとっては、オンラインサロンにお金を払って、企業で働く代わりに働くという事になりますので、ちょっと変に思う人も多いかもしれません。(お金払って働くってどういうこと?って思うでしょ)
でも、実はちゃんとコストが交換できているのです。
どういう事かというと、個人は「働き方の自由化」を実現するために労働カ所を分散する必要があります。しかし、そのためには「転職活動」「求職活動」「営業活動」「個人事業の立ち上げ」などのコストが本来必要なのです。
その点、オンラインサロンでは超強力な個人インフルエンサーが仕事を大量に生み出してくれるため、そこに集まっていくだけでコストをスキップして仕事にありつくことができるのです。
この場合、たとえその瞬間に労働と見合った報酬が得られなくても、経験値や名声、信頼や人脈を稼ぐことで市場価値が上がりますので、ペイしているという話になるのです。(そもそも、事業を自分で始める場合には投下コストと報酬が瞬間的に見合わないことは普通のことです。「サロンに入ってただ働きするのはアホ」みたいに言っている人は、事業をやったことが無いのでその辺が分からないのだと思います。)
これは、言ってみれば「めちゃくちゃ営業がうまいワンマン社長が仕事を取ってきまくって、社員がそれをこなしていく」という感じとほぼ同じなので、言ってしまえば「中小企業の形態が時代に合わせて自由化した」という感じで理解すれば分かりやすくなると思います。
ゼロから全員が個人事業を持ってフリーランス化していくのは大変難しいことですが、ワンマン社長が仕事を創りまくってくれる環境にうまく近寄っていけば、低コストでフリーランス化(労働の自由化)を実現できます。
この形態のオンラインサロンの場合は、「幹部っぽい人」「オーナーと近づけた人」「運営サイドに回れた人」などの少数の人が大量に受益できる構造になります。
もちろん、1000名2000名の人が所属するオンラインサロンで、その全員が満足するくらい仕事にありつければよいのですが、ワンマン社長が養えるのは最大でも50名くらいが限界でしょう。そして、そもそもの話ですが「仕事というのは組織内で大変偏って分配される」という性質があります。ですから、全員が受益できるというのはあり得ません。
さらにこの場合、ワンマン社長のモチベーションや熱量、営業力や影響力などによってサロン全体の価値が激しく変動してしまうというリスクがあります。
ワンマン社長は「社員全員に伸びて欲しい、チャンスを渡したい、成長できる場所にしたい」と思ってひたすら上に登り続けようとするでしょうが、現実は名前を覚えられる人数(50名~最大でも100名程度)しか受益できることはないので、熱量や勢いがあるうちは人が増えていきますが、人間の熱量は数年で冷めていきますのでだんだんシュリンクしていき、最終的には中小企業の社員数と同じ程度(50名~最大150名程度)の受益できるメンバーに加えて、可能性を感じながらも遠巻きで見ているだけでも満足できる人がその3倍から4倍くらい(150名~600名程度)ということで、200名~750名くらいの規模感に落ち着いていくと予想されます。
(そう考えると、すでに1600名程度でピークアウトしているように見えるホリエモンサロンの凄さが分かります。ホリエモンの器のでかさが、倍の規模感を成立させているように思います。)
この段階で、ワンマン社長の方に飽きがきてしまい、おそらくほとんどのオンラインサロンが解体されるでしょう。(ピークアウトすると飽きるのがワンマン社長の特徴です)
パターン2:オンラインサロンは有料メルマガ(メディア)のリプレイスである
次に、有料メルマガのリプレイスという視点です。
これまでも、「限定情報に課金する」というビジネスモデルは存在しました。
これまでは、情報配信者が1で、受け取り側がNという形がメジャーでしたが、オンラインサロンはオーナーが限定情報を配信し、そこでコメントを通じてコミュニケーションが発生するので、「ちょっとオーナーやユーザー間でのコミュニケーションが発生する可能性がある有料メルマガ」という感じで理解すると分かりやすいと思います。
こちらは、限定情報の配信というバリューにどれくらい価値を維持できるかという話が重要になってきます。
ただ、有料メルマガ市場がそんなに大きくないように、「情報自体に価値を持たせるのは非常に難しい」という時代になってきています。IT化によって、あらゆる情報が無料で入手できるようになってきているからです。
この場合、ユーティリティ(利便性)にバリューを寄せてしまうと、いつかグーグルに負けてしまいますので、「最新の情報」「検索しても出てこない専門性」などが必要で、どうしてもニッチになってしまいます。
そういう意味では、研究者が運営するマニアックなオンラインサロンなどは、スケール(規模の拡大)はできませんが、非常にサステイナブル(維持できる)だと思います。
この場合に有効なのは「エンタメ」にバリューを寄せる方向です。
例えば、芸能人やアイドルやエンタメ寄りのインフルエンサーが運営するオンラインサロンの場合は、「そこでしか見られないオフショット」「公式には言わないような発言や情報」などがみられるという事で、それだけでバリューが維持できますし、一定規模までスケールできます。もちろん、バリューを維持するための普段のブランド活動(発信作業)が重要になってきます。
言ってしまえばファンクラブです。
他にも、「有名人を招致し、キュレーションメディアとして質を担保する」という方法も有効でしょう。この場合は、招致力が重要になってきます。
私は、7月からのピボットで、ここに新たな可能性として「ユーティリティ」でもなく、「ファンクラブ」でもなく、「ユーザー参加型メディア」というバリューを持ってこれないか?というチャレンジを行う予定です。
どうせ、ユーティリティで勝負してもグーグルに勝てませんし、ニッチにやるつもりはありません。
そして、ファンクラブ型にしてしまうのは「教育サービス」にとって非常に良くない。「特定の人が中心にいて輝いている」という状態は多様性教育を阻害し、生徒の成長に悪影響だからです。
大雑把にくくると「CGM」に該当することになりますが、これまでのWEB上で展開されてきたような「ユーザーが投稿し、互いに評価しあう」という仕様のCGMだとフリーミアムモデル(クックバッドとかニコニコ動画とか)になってしまいます。
それをサブスクリプションモデル(アマゾンプライムとかネットフリックスとか)にするために、「コンテンツ配信モデルだが、ユーザーがコンテンツに参加できる」という仕様を目指しています。
これはマーケティングの視点で言うと、「モノや情報」から「時間や体験」にシフトしているのに連動した動きで、もう少し大雑把に言うと
体験型メディアをどうやって作るか
という取り組みだと言っていいでしょう。
そもそも、オンラインサロン自体も「情報を受け取るだけでなく、自分も参加できる」ということで、有料メルマガに体験価値が付与されたサービスでもあります。
しかし、既存の「限定情報型」のオンラインサロンはUXが極めて悪く、体験価値がほとんど提供できていません。(Facebookグループでオーナーが書き込みをしたとしても、コメントを入れるのに勇気が必要だったり、既出の話題か気になって書き込めなかったり、過去スレが見にくかったり、人数やコメントが増えすぎると見づらくなったりなどの要因で、コメント数(厳密に言うとアクティブ率)が伸びないケースが多いです。オフ会なども一部の人間しか参加できません。)
UXが悪くて「体験価値」をほぼ提供できず、かといって「情報価値」としても限定性や最新性などが中途半端。結果として、メディアとしてほとんど受益できていないユーザーが多いにも関わらず、オーナーの人柄やマメなフォロー、カリスマやビジネスの実績などで「入っておけばなんかいいことあるかも」「まぁいい人だし安いしいいか」などの心理状態にし、実質ファンクラブ型の状態で何とか誤魔化しながら無理やりバリューを維持しているというのが、このタイプのオンラインサロンの実情と言っていいでしょう。
そこで私は、情報の質や量で勝負するのではなく、「体験価値を高めるUX」にドライブしていく方向性で勝負するということです。(というか、実際にこれまでも勝負してきて、アクティブ率を高めることに成功した結果の受賞だったのですが、スケーラビリティのない手法であったため、ピボットすることになりました)
UXを「ユーザーが体験価値を感じることができる」という方向性に寄せまくって追求していくことで、体験価値のあるメディアとしてバリューを発揮できないだろうか?
そんな風に考えています。
パターン3:オンラインサロンはマッチングサービスのリプレイスである
3つ目ですが、オンラインサロンはマッチングサービスとしてのバリューを持っています。
特定の文化やオーナーの元に集まり、課金までしている人間の集団なので、属性が自然と偏ります。
同じような文化や風習を愛する人たちと交流できること自体に価値があるという意味では、会員制のクラブや経営者限定の交流会などの形がオンラインに変わったと考えると、理解しやすいでしょう。
そこで出会う人との交流自体に価値が生まれますので、主催側としては非常に楽なのですが、会員の質自体が価値になりますので、人が増えすぎると質が薄まってしまい価値が薄れる傾向にあります。
会社と家庭以外の場所を持ちたい人にとっては、サードプレイスとしての価値を発揮できます。「とりあえず、ここに所属していることで自分は成長できるかもしれない、可能性を得られるかもしれない、違う自分への扉が開いている状態になれる」という感覚で、ユーザーは課金します。
しかし、現状のオンラインサロンは「マッチングシステム」が明確にあるわけではなく、「マッチングするかしないかはユーザー次第」という感じになっています。
ほとんどのユーザーは「可能性を感じたい」「違う自分になれる(気がする)」という欲求で所属し続けますが、UXが悪いため実際に「交流によって人生が変わる」という人は自主的に動ける一部のユーザーのみになってしまい、なおかつ「そういう人は放っておいても自分で人脈が作れるタイプ」であるため、結局は「可能性という幻想を、弱い人に売り続ける信者ビジネス」という風に言われがちです。
まとめ
さて、まとめると、既存のオンラインサロンは「仕事の分配機能」「情報価値」「マッチング」という3つの価値を併せ持っているという事になります。
しかし、残念ながらオーナーがこういった視点でビジネスモデルを分析していないため、これらの3つの価値がごっちゃごちゃになって提供されており、なおかつUXが非常に悪いままユーザーの主体性に大幅に依存して成立している状態になっています。
その結果、ユーザーも「なんで使っているのか分からない」し、オーナーも「サービスが何なのか説明できない」状態が長く続き、良く分からない業界になっています。
結果として、「怪しい」とか「虚業だ」とか「信者ビジネス」とか色々言われ続けています。
この辺が修正されないと、オンラインサロンという業界は全体がシュリンク(縮小)するでしょう。
そして、たぶんこのまま何年経っても修正されないので、シュリンクするでしょう。
知らんけど( ˘ω˘ )
ちなみに、ノリと勢いでビジネスをやるより、こうやってビジネスモデルやマーケティングの視点でとらえられるようになると、すごくサービス創りは楽しくなりますし、成果も出やすくなると思います。
色んな本を読んで私も勉強しているのですが、こちらの本は気づきがあって面白かったです。
[amazonjs asin=”B00I0UCRSK” locale=”JP” title=”ITビジネスの原理”]マーケティングに詳しくなりたい人や、ビジネスを自分でやっていきたい人は一読をお勧めします。
じゃあ今日も精進しましょう。