おはこんばんにちは
がくちょうです。
先日ファーストペンギン村の設計書を公開したのですが、私はもう1つ「趣味領域のCNS」も運営しています。
サービス名はアタリメ団というのですが、今日はそのアタリメ団の設計書も公開したいと思います。
ユーザー満足度が高く、リピート率が高くなるオンラインコミュニティの作り方に興味がある人は是非参考にしてみてください。
マクロの設計
マクロ視点の話です。
アタリメ団も、ファーストペンギン村と同じく
カルチャー・ネットワーキング・サービス
という風にサービスを定義しています。
これは「同じカルチャーの人をつなげるサービス」という意味です。
以下、CNSと略します。
CNSにおいて重要なのは文字通り「カルチャー=文化」であって、文化を創り出して維持していくのがCNSのオーナーの仕事だと考えるとすっきりするのでお勧めです。
文化というのをかみ砕くと、
「●●の仕方」
という風に表現できます。
例えば、食べ方。挨拶の仕方。話し方。踊り方。
そういったものはすべて「文化」によって変わります。
そして、アタリメ団は「遊び方」についての文化を共有するCNSとして設計してあります。
音楽にヒップホップとジャズがあるように、遊ぶというテーマでもいろいろな文化があっていいはずです。
21世紀は、これまで以上に様々なテーマにおける文化が発展していき、そしてオンラインで自分が所属する文化をテーマごとに選べるような社会が来ます。
これが私が描いているCNSによって多様化された社会の展望です。
文化とは「らしさ」である
文化とは言い換えると「らしさ」です。
ヒップホップらしさ。ロックらしさ。
それぞれの文化において、「らしさ」というのが存在しており、それを共有している範囲が文化圏となります。
逆に言うと、文化を創る時は「らしさ」から設計していく形になります。
アタリメ団の文化=らしさの設計
アタリメ団は遊び方というテーマにおけるCNSなので、
こんな遊び方がアタリメ団らしさだよね
というのを最初に定める必要があります。
余談ですが、これを表現しやすいように「アタリメ」と呼んでいこうと思っています。
アタリメ団の文化を体現している人を見たら「ロックだねぇ」みたいな感じで、「アタリメだねぇ」という風に声をかけるという感じで普及させていく感じです。
では、どんな遊び方がアタリメなのか。
アタリメな遊び方:ひとことで表現
記録より記憶に残る遊び方
アタリメな遊び方:一行で表現
思い出と人間関係が積み重なっていく遊び方
アタリメな遊び方:解説も加えて表現
- Eスポーツで遊ぶというのは、仲間と目標に向かって努力する過程でお互いに成長し、勝っても負けても10年後に一緒に笑って思い出せるような人間関係と思い出を積み上げていくことである。
- 本気だからこそぶつかり、真剣だからこそ悔しい。それでも人のせいにせず、自分と向き合い、仲間と苦しさを分かち合っていけば、結果よりも大切なものが心に残っていく。
- 上記のような考え方を元にして、「チームプレイ」を大切にしながら「全力で遊ぶ」のがアタリメな遊び方である
私は文化の設計者として、アタリメ団の「らしさ」をこのように定義しました。
アタリメじゃない遊び方:分かりやすいように反対側も表現
- うまくいかないことを他人のせいにして毒ばかり吐いている
- 連携を取らない、連携の取れない遊び方ばかりして常にイライラしている
- 目標を仲間と分かち合わないからいつまでも本気になれない
- 辛さも喜びも一緒に体験できる人がいないから段々むなしくなってくる
- 数字や記録だけにこだわってしまいストレスを貯め続けている
- 対話を避け、自分のことだけ考えて他人の成長を助けない
所属する人を文化に染め上げるのがCNSというサービスの価値
CNSは、所属する人が勝手にその文化に染まっていき、気づいたら立派なアタリメになっていた!というのを実現できます。
例えばですが、ヒップホッパーの集団に1年間所属していたら、1年後は見た目も話し方も立派なヒップホッパーになりますよね。
まぁそういう感じです。
これをオンラインだけで実現していくのが、CNSというサービスの革新的な価値になります。
私は「こんなアタリメな遊び方を一緒に目指していく人はいませんか?」という風に周りに呼びかけ続けています。
そして、「今の自分の遊び方よりもアタリメな遊び方のほうを目指したい」と感じた人たちが集まってきて、アタリメ団という場所が形成されているという事です。
あとは、集まった人たちがCNSによって勝手に文化に染まっていき、目指していた働き方が実現していくという構造ですね。
では、どうやってオンラインだけで、所属する人を特定の文化に染め上げていけるでしょうか。
ここからはミクロの話になります。
ミクロの設計
先ほど説明したように、
- Eスポーツで遊ぶというのは、仲間と目標に向かって努力する過程でお互いに成長し、勝っても負けても10年後に一緒に笑って思い出せるような人間関係と思い出を積み上げていくことである。
- 本気だからこそぶつかり、真剣だからこそ悔しい。それでも人のせいにせず、自分と向き合い、仲間と苦しさを分かち合っていけば、結果よりも大切なものが心に残っていく。
- 上記のような考え方を元にして、「チームプレイ」を大切にしながら「全力で遊ぶ」のがアタリメな遊び方である
これがアタリメ団で大事にしている文化です。
この文化を
- 理解して
- 体現して
- 幸福を感じる
という人が出現すると、CNSというサービスは成功したことになります。
そのために、大きく3つのものが必要です。
①情報密度
人間の考え方というのは、結局のところインプットした情報に依存しています。
大量の偏った情報をインプットすれば、賢者にでも犯罪者にでもなれるわけです。
そこで、文化についての情報を何度も何度も大量にインプットしてもらうことで、当たり前の基準を良い方向にバグらせていきます。
これが情報密度です。
②言語化
情報を効率的に伝えるためには、言語が必要です。
人数が増えて年月が経てば、「ロックらしさ」みたいなのは雰囲気でも伝わっていきますが、文化を創造していく初期段階は明確に言語化しないと全然伝わりません。
自分がこれから創造していく文化では、何を大切にしていくのか?どんな考え方や行動を推奨していくのか?について、最初に明確に言語化する必要があります。
途中で微妙に変わっていくのは問題ありませんが、言語化していないのは問題です。
③ゲーム
こんな風に考えて、こんな行動をしていこうよ!
という文化が普及していけば、一定数の「察しの良い人」や「行動力のある人」が勝手に自主的に行動していきます。
しかし、言語化された文化だけでは抽象的すぎて行動できない人の方が多いです。
「チームプレイを大事にして全力で遊ぼうぜ!」と言われても、ほとんどの人は具体的な行動がイメージできませんよね?
そこで、ゲームの出番です。
ゲームというのは「課題とルールと評価システム」がセットになったものです。
こんなルールに従って、こんなことに挑戦してみましょう!
という方向性や基準を提供することで、行動を促進します。
これは、チュートリアル程度のもので構いません。すべてをコントロールする必要があるわけではなく、「全くどうしたらいいかイメージできない人」が「最初の一歩を体験できる」だけでOKです。
このゲームシステムを通じて
理解していたことを⇒実際に体現して⇒CNS内で評価される
という体験をすれば、やり方を覚えたユーザーはその後は勝手に行動するからです。
この3つ。
- 情報密度を高める
- 言語化する
- ゲームシステムを創る
という3つを行うことで、CNSに所属するユーザーの考え方が変わり、行動が変わっていきます。
そして、ゲームシステムによる評価でユーザーの「外的モチベーション」を維持し続けた先に、どこかのタイミングでユーザーが成長や成果を実感した瞬間に「幸福を感じる」という条件を満たすことができ、外的モチベーションが「内的モチベーション」に変化します。
その時に初めて、ユーザーは自分自身の体験を通じて「チームプレイを大切にして全力で遊ぶのは良いことだ」と信じることができます。
そうすると、そのユーザーは文化を「広める側」になっていってくれます。なぜなら、自分が信じる文化を信じている人が多い方が、居心地が良くなるからです。
この
- 理解して
- 体現して
- 幸福を感じる
の3番まで到達したユーザーが増えてくると、CNS自体が文化普及システムとして自走していきます。
アタリメ団のシステム事例
アタリメ団は文化普及システムである。
文化を理解して、体現して、幸福を感じる人が発生したらサービスとしての成功である。
そのためには「情報密度」「言語化」「ゲーム」の3つが必要である。
という話をしてきました。
ではその3つの必要なものを、アタリメ団でどうやって実現しているか?についても事例を提供します。
言語化
これに関しては、前述した通り明確に言語化してあります。
明確に言語化できてきたのは最近なので、今後はこの言語化した文化というのを伝える機会を増やしていく必要があります。
情報密度を高める方法
情報密度はKPIで言えば「ログイン回数」になります。
情報の密度というのは、言い換えるとユーザーが情報に接する回数です。
高頻度で特定の情報に接するほど、情報の密度が高まっていきます。
これは、アタリメ団では「小規模同期空間」を提供することで実現しています。
小規模同期空間であれば、オンラインでも交流の回数が圧倒的に増えることが分かってきており、それによって最低でも1名以上の「深く知っている人」を創ることができます。
これがユーザーの心理的安全に繋がり、その後の活動を増やしてくれます。
CNSのオーナーがどれだけ頑張って投稿しても、1日1回が限界だと思います。それに、中央集権型で一カ所に人と情報を集めようとすると、情報量があふれて処理しきれなくなります。
それと比べて、ユーザー同士が小規模空間で交流を始めると1日何百という交流が発生して「常時ログイン」に近い状態が作れますし、交流する場所が分散していくので処理能力を超えずに運用できます。
ユーザーが「1日中見ていた」と感じるくらいの情報密度が実現すると、第一段階はクリアだと言えます。
そのために、アタリメ団では小規模同期空間をできるだけ多く発生させることを意識しています。
小規模同期空間とは?
小規模同期空間は、
- 6人以下の人数で一定期間以上集まる
- 目的や属性や時間軸が同期している
- 閉鎖空間で交流を行う
という条件を満たした場所を指します。
オンラインだと方法としては
- ビデオまたは音声ミーティングを開催する
- リアルタイム性のあるチャットやグループを創る
の2つしかありません。
つまり、ユーザーが自発的に上記のような行動をしていくようにできれば、情報密度を高めることができます。
じゃあどうやってユーザーに自発的に小規模同期空間を創らせるの?という部分が、さらに3つ目の「ゲーム」に繋がります。
ゲームを設計する
ゲームというのは前述したとおり、「課題とルールと評価システム」がセットになったものを指します。
文化で定義した「推奨する行動」をうまく促すことができるような課題やルールを作って、実践できた人を評価してあげるイメージです。
アタリメ団では「チームプレイ」と「全力で遊ぶ」という行動を推奨しているので、
- チームを組んで大会に出場しましょう(課題)
- 大会はこんなルールで進行します(ルール)
- 大会の試合は配信したり、特集誌や番組を流したり、エンドロールで表彰したりしますよ(評価システム)
という感じでゲームを設計してあります。
ここで、上記の「小規模同期空間」とゲームをセットにすることで、さらに情報密度を高めることができます。
つまり、ゲームの課題を「小規模同期空間」を作らないとクリアできないようにしたり、小規模同期空間を作ってクリアすると報酬が大きくなったりするように設計するのです。
アタリメ団はスプラトゥーンの大会をメインに行っているので、必然的に大会に出場すると4人組でディスコードというツールの音声チャットにログインして、4人で話し合う機会が増えます。
これによって、小規模同期空間が同時多発的に各所で発生するようになっています。
こうやって、
- 明確な文化の言語化を行う
- 行動を促進強化するゲームを設計する
- ゲーム中に小規模同期空間を通過させる仕組みを作る
という3つを行うことで、
- 情報密度を高めて当たり前の基準をバグらせていき、文化の理解が深まっていく
- 周りに影響されて自分もゲームシステムに従って行動し始めて、文化を体現していくようになる
- 最初はゲームシステムの評価が報酬になるが、そのうち成果や成長を体感し始める
- 文化を「善いこと」だと認識し、文化の普及側に回っていく
- 情報密度によって文化の普及が急速に進んでいく
というユーザーシナリオが実現します。
これが、文化の浸透によって考え方と行動習慣を変えさせて、自然と理想的な遊び方を実現させていくアタリメ団というCNS(カルチャー・ネットワーキング・サービス)の設計書になります。