皆様お疲れ様です。
がくちょうです。
今日は、2019年からちょうど丸2年くらいサービスとして運用してきた「AFB」という名称のEスポーツクラブチームについて、振り返りとこれからの考察を書いていこうと思います。
Esports業界はこれから本当に伸びしろが大きいと思っていて、技術的なブレイクスルーや法律面の整備なども全然追いついていないまさに「フロンティア」感が凄いです。
楽しい反面、やっぱり難しい要素も多かったので、その辺も話していこうと思います。
目を付けている領域について
読者の方も、Eスポーツという言葉だけだったら聞いたことはあると思います。
まぁ簡単に言うと、ゲームがスポーツ化していってると思ってください。
スポーツ化するというのは、つまり「スポーツビジネスで起こっていることは少なくとも全部起きる」ということで、例えばですが
- スタジアムに人が集まって、観戦する(野球とかサッカーみたいな)
- 実況中継などが放映され、スポンサーがつく
- 関連グッズなどが販売されたり、ファンクラブが立ち上がったりする
などがイメージできます。
さらに、オンラインでファンとリアルタイムで繋がれる「ゲーム」というジャンルだからこその、様々な関連事業なども立ち上がることが予想できますね。例えば
放送中に良いプレイをした選手に投げ銭が直接入る仕組み
とか
会場に行かなくてもVR環境でゲーム内の世界に一部干渉できる
とか、今後の技術発展に伴ってまさに無限の可能性があると言っていいでしょう。
で、その中で私が「面白いかな」と思っているのが
チームPVP
というジャンルにおける課題です。
これは
- 3対3
- 4対4
- 5対5
とかでチーム同士が戦うPVP(プレイヤーVSプレイヤーの略で、人間同士が戦うという意味)のゲーム領域のことを指していて、
- バトルロイヤルのチームモード(フォートナイト、APEXなど)
- MOBA(LoLなど)
などが世界的にも普及している人気ジャンルだと言えます。(ちなみにチームじゃないPVPの代表はストリートファイターなどの格闘ゲームですね)
この「チームPVP」のジャンルは、
- 通信の速度と安定性(世界中で同時に接続してオンラインゲームをやるため)
- ユーザーのデバイスのスペック(しょぼいゲーム機じゃ動かないため)
- 通話環境等のサードパーティーの質と種類(戦略などをリアルタイムで通話しながらやるため)
- センターサーバーの処理性能(膨大な計算を同時処理し続けるため)
などの様々な条件が全て揃わないと成立しないジャンルで、MOBAなどは意外と古くからあるのですが、正直に言ってこれまでは
ちょっとゲームオタク向けのジャンル
でした。
それが、最近になって上記の4つの外部ファクターが全て整って安価に普及してきたので、急速に市場を拡大し始めているという状況です。
スポーツ市場においても、やはり規模が大きいのは
- サッカー
- ラグビー
- バスケット
- 野球
- アメフト
- クリケット
などなど、チームPVPジャンルですよね。
そして、Esportsには「距離の概念が無い」「身体的な衰えの影響が少ない(現役が長い)」「収録や放送などに必要な設備投資が少ない」など、既にリアルなスポーツを上回る要素がたくさんあります。
そのため、私は今後の何十年かで「リアルなスポーツ市場」のかなりの部分がチームPVPのEスポーツジャンルに流れ込んでくるのではないか?と予想を立てています。
例えば上記に羅列した6種類のリアルスポーツに参加しているプレイヤーの3割が、家庭環境や身体的な問題でEスポーツ側に流れてきただけでも、どれだけのインパクトがあるのかが想像できるのではないでしょうか。
上記が私が2年間、全くの素人の状態から業界で様々なテストを行ってきた結果に得た考察です。
課題の解像度
さて、上記はマクロ視点の話でした。
次はミクロの話、つまり実際にその「伸びていく業界」において、誰がどういったことに困っているのか?(困っていくのか?)という話をしなくてはいけません。
そうやって顧客の解像度を高めた結果、さらに自分のビジネスリソース内で解決できる課題に絞って取り組んでいくというのが、私がスモールビジネスを立ち上げる際に行っている手順です。
(マクロ分析⇒ミクロ調査⇒リソース適合チェック⇒リーンでスタートという流れですね。非常にスマートなやり方なので皆さんにもお勧めします)
チームPVPという領域におけるユーザーの課題に関しては、まず大きく2つのフェーズに分類できそうです。
フェーズ1は、
【ゲームタイトルにハマって、何かしらの「目標」を持った】
というステータスです。
このフェーズ1の手前は、目標などの意識が無く単純に遊んでいる、ゲームをやっているという段階のプレイヤーを指します。
そして、フェーズ2は
【ゲーム内での目標をカンストしてしまった】
というステータスになります。
- フェーズ0:単純にゲームで遊んでいる(目標などの意識がない)
- フェーズ1:何らかの目標を持ってゲームをプレイしている(ここでゲームからEスポーツに変わる)
- フェーズ2:ゲーム内の目標をカンストした(最高ランク等に到達した)
という風に分類ができます。
フェーズ1と2では、ユーザーは別の課題を抱えているため、違う方向性のソリューションが必要になります。
フェーズ1について
フェーズ1のプレイヤーは、大雑把に言ってしまえば
上達したい
という方向性の願望を持っています。
これが少し面白いところなのですが、リアルスポーツだと順番としては
- 何らかのチーム(部活とか草チームとか)に加入する
- チーム練習に参加する
- ハマる
- 自主練習を行う(この辺で上達したいという願望が発生)
- チーム内での個人目標(レギュラーになるなど)ができる
- チームとしての目標(リーグ戦や練習試合で勝つなど)ができる
という順番が一般的だと思います。
ですが、ゲームスポーツの場合は
- ハマる
- 個人での目標ができる(ここですぐ上達したいという願望が発生)
- ほぼ実戦ベースで自主練習する
という風に、リアルなチームPVP競技では絶対に存在しないユーザーエクスペリエンスが発生します。
想像してみてもらえれば分かると思いますが、
ある日、なんの前触れもなく自分の子供がサッカーにハマり、さらに「県で10位のプレイヤーになりたい」みたいに明確な個人目標を持って1日3時間とか練習し始める
なんてことが起こると思いますか?
つまりゲームスポーツは、リアルスポーツと違って
- チーム競技なのにチームに所属しなくても夢中になれる(ゲームは1人で購入してもプレイできるように設計されており、またゲーム内にユーザーを夢中にさせる仕組みがあるため)
- チームに所属しなくても個人目標が立てられる(個人のスコアリングやランキングシステムなどがインターネット経由で簡単に作れるため)
- チーム練習や基礎練習をしていないのに実戦ベースの自主練習ができる(チームを組んだりしなくても世界中とランダムマッチングで即席チームを組んで、1人試合に参加できる仕様になっているため)
という特徴があるのです。
このユーザーエクスペリエンス(以後UX)の違いは、下記のような2つの現象に繋がっています。
現象1:チームPVPのゲームスポーツは、圧倒的に裾野を広げやすい
本質的にはチーム競技であるにも関わらず、個人でいきなり夢中になれて、最初から明確な個人目標が立てられて、毎日試合ができる。
この特徴は、プレイヤー人口を増やすことに大きく貢献しています。
例えばサッカーなら、
- 個人でいきなり夢中にはなれない(1人で壁に向かってボールを蹴っていて夢中になれる人は少ないでしょう)
- 明確な個人目標が立てづらい(1人で個人のプレイヤーとしての目標は立てようがありません)
- 毎日試合をしたりできない(1人で好きな時に試合したりできませんからね)
という感じで、夢中になるにも目標を立てるにも試合をするにも、とにかく基本的に「チーム単位」での行動が必要になります。
たった1人で始めて、そのまま夢中になれて、目標が設定できて、毎日いつでも試合ができるというのは、プレイヤーにとっては天国のような環境と言っていいでしょう。
ある意味、
- 自分に合ったチームを探したり
- チームの雰囲気やメンバーに溶け込んだり
- 練習時間と場所に合わせて通ったり
- つまらない基礎練習をやったり
- 試合に出るためにレギュラーを勝ち取ったり
などの面倒で地味な部分を全部すっ飛ばして、
一番おいしいところだけ最初から常に食べ放題になってる
のが、チームPVPのゲームスポーツ(以下チームEスポーツ)の特徴だと言えるわけです。
結果、めちゃくちゃ人口が増えやすい。
例えばサッカーの国内競技人口は推計で400万~500万人程度というデータがありますが、私の好きなスプラトゥーンというゲームは、発売から数年で同じ規模感までプレイヤー数を拡大しています。
サッカーがどれだけの歴史と積み上げを経てここまでやってきたかを考えれば、世の中に出てたった3年程度のゲームタイトル1つが、同じ規模感までプレイヤー人口を増やしたことがどれだけ偉業かが分かります。
チームEスポーツは、リアルスポーツと比べると圧倒的に「プレイヤー人口を増やしやすい」というアドバンテージを持っているのです。
現象2:チームEスポーツは、ハマった「あと」が辛い
たくさんの人が気軽に始められて、しかも1人でも夢中になって目標を追いかけ続けられてしまう。
そうやってプレイヤーの人口や層を拡大するまでは良いのですが、問題はその「あと」の方に訪れます。
先ほど、チームEスポーツは
・自分に合ったチームを探したり
・チームの雰囲気やメンバーに溶け込んだり
・練習時間と場所に合わせて通ったり
・つまらない基礎練習をやったり
・試合に出るためにレギュラーを勝ち取ったり
などの面倒で地味な部分を全部すっ飛ばして、一番おいしいところだけ最初から常に食べ放題になってる
という風に言いました。
逆に言えば、リアルなチームスポーツはこういった部分を最初に乗り越えているからこそ、
- 困った時や悩んだ時にチームメンバーが助けてくれたり
- 練習や結果だけではない友情や人間関係がモチベーションになったり
- 上手くなるための基礎や練習方法を教えてもらえたり
- 負けたくないライバルができて本気になれたり
するわけです。
つまり、そういった「育成環境」と呼べるようなものがチームEスポーツ側には一切無いのです。
ここが、フェーズ1のユーザーにとっての主たる課題となっています。
フェーズ1は大きく言ってしまえば「上達したい」というシンプルな願望ですが、「育成環境への所属と適合」をすっ飛ばして楽しめてしまうというメリットが、ハマった「あと」にはデメリットになってしまうわけですね。
それが例えば、
- 技術の体系的な知識に触れる機会が無い(どうやって上達すればいいか分からなくなる)
- 自分を客観的に確認する機会が無い(自分の悪い部分や自分に合った戦術、プレイスタイル等が分からなくなる)
- 中長期でメンタルを支えてくれる存在が無い(上手くいかない時にメンタルを維持できなくなる)
などのユーザーの具体的な課題として顕在してきます。
さらに、この「育成環境の不足」という根本的な課題に加えて、
- そもそも競技として歴史が浅くて、ちゃんと研究されていない
- アップデートや新タイトル発売などによって、ルールや構造などが不安定である
- チーム競技なのに味方と連携できないため、敗因分析やストレスコントロールが難しい
などの条件が重なり、
上達したいけど、目標が達成できないままで伸び悩んでしまった
というユーザーに対してのソリューションがほぼ存在していないという状況になっているわけです。
フェーズ1のユーザーの課題
フェーズ1についてまとめると、
- Eスポーツは1人で始めてもスポーツとしてハマれる構造のため
- 大量の「孤独な初心者プレイヤー」が発生するが
- 歴史の浅さ、更新性の高さ、若年層の多さなどが原因となって
- 受け皿となれる「育成環境」が不足している
という風に表現できます。
育成環境がないとプレイヤー自体が増えないリアルスポーツと違って、「育成環境に所属していないのに熱量の高いプレイヤーが大量発生する」というのが、Eスポーツ業界を抑える上での重要な特徴なのです。
スプラトゥーンというタイトルだけで見ても、2の現在で販売数は1200万本、常時接続は不明ですが、「ガチマッチ」というスポーツ性の高いルールに取り組んでいる人口は推計300万人以上存在しています。
サッカーに近い市場規模があるにも関わらず、育成環境は「ほぼゼロ」と言っていい状況です。
サッカー市場の「育成環境」がどれだけあるか分かりますか?
小中高大の部活・ローカルチーム・社会人チーム・実業団・プロリーグ・ユース・スクールなどなど・・・
サッカー人口の400万人を支えるために、全国に無数の育成環境が存在しています。
これだけでも、Eスポーツに巨大なチャンスとインパクトがあることが伝わると思います。
ここまでが、フェーズ1におけるユーザーの課題と、それを引き起こしている業界固有の特徴でした。
次に、フェーズ2についても見ていきます。
下記が3つのフェーズ分類の再掲です▼
- フェーズ0:単純にゲームで遊んでいる(目標などの意識がない)
- フェーズ1:何らかの目標を持ってゲームをプレイしている(ここでゲームからEスポーツに変わる)
- フェーズ2:ゲーム内の目標をカンストした(最高ランク等に到達した)
フェーズ2について
フェーズ2のユーザーの願望は、簡単に言うと
違う楽しみ方がしたい
という風に表現できます。
フェーズ1の「孤独な初心者プレイヤー」を自力で抜け出していった一部のプレイヤーがこのフェーズ2に到達するイメージです。
Eスポーツ系のゲーム内には、基本的にプレイが上達するほどランクが上がっていくなどの仕組みが実装されています。
- ブロンズ⇒シルバー⇒ゴールド⇒プラチナ⇒ダイヤモンド
- C⇒B⇒A⇒S⇒S+⇒X
などなど、名称やランクの数などは違いますが、大抵の場合は勝つほどにランクが上がっていき、どこかで最終ランクに到達するシステムになっています。
この最終ランクに到達したユーザーが、フェーズ2に該当します。
フェーズ2まで到達してしまうと、簡単に言ってしまえば
目標が無くなってしまう
という現象が発生します。
もちろん、そこからさらに
- 世界ランキング上位を目指す
- 1ポイントでも上を目指す
などの遊び方はゲーム内で用意されているケースが多いのですが、上にいけばいくほどゲームに人生を注いでいるプレイヤーとマッチングしていくため、どこかのタイミングで
注いでいるエネルギーと、達成した時の得られるものが釣り合わない
という状況になります。
私もそのあたりまで足を踏み入れたことがありますが、
- 1日で使える集中力を全部ゲームに使わないといけない
- ゲームのスケジュールに合わせて生活をコントロールしなくてはいけない
- プレイ中は雑念や会話など一切禁止し完全隔離状態にしなくてはいけない
- 1つのミスで1日中後悔するレベルで張りつめてプレイしなくてはいけない
という世界です。
簡単に言えば、生活の9割以上をゲームに持っていかれます。
これだけ犠牲を注いでも、お金が稼げるわけでもないし、誰かに褒めてもらえるわけでもありません。(むしろ、ゲームばっかりして・・・とか言われそう)
ここまで行くと
自己満足のために人生を全部投資できるのか?
という世界になってきます。
そして、ほとんどの人の答えはNOです。
つまり、
たった1人で数字を追いかけ続けるという楽しみ方以外の何か
が必要になってくるわけです。
これが、フェーズ2の人に訪れる代表的な願望です。
リアルなスポーツでの解決策は
これは別に、Eスポーツ特有に発生する問題ではありません。
どんなスポーツでも
- マンネリ
- 目標の喪失
などは発生します。
ではリアルスポーツで、そういった時にどんなソリューションがあるか。
まず思いつくのは、「チームとしての目標や役割」です。
個人目標だけではなく、チームとしての目標ができたり、その目標に向けて自分の役割が明確になったりすると、別のモチベーションが働きます。
- チームを勝たせたい
- チームの役に立ちたい
- チームメンバーを育てる必要が出てきた
など、自分ひとりでは味わえない楽しみが増える上に、より難しく複雑な課題になるため、スポーツ自体にも長く取り組めるようになる場合が多いです。
柔道や剣道などの個人競技でも、団体戦やチーム運営などが発生するケースが多いので、同じように解決されていくでしょう。
自分はレギュラーになれていないけど、チームでのこういった役割を果たせている
などのモチベーションでスポーツを続けている人はたくさんいます。
加えて、このような複雑な課題に取り組むからこそ、コミュニケーション力や課題解決力が磨かれるという側面もあります。チーム競技やチーム運営をやっている人間が新卒採用で評価されるのは、単純に「会社員というゲームが同じルールだから」という理由なのです。
次に、「数字以外のイメージしやすい目標」の存在です。
例えば、陸上競技で自己ベストの数字を1秒更新していくような戦いは、非常にストイックで辛いものになるのがイメージできると思います。
人間の脳は数字自体の意味を理解しづらい特性があるため、
- 数字を達成した結果⇒誰かに褒められる
などの脳に快感を覚えやすい報酬と繋がっていないと、モチベーションに繋げることができません。(人の顔は100種類くらい簡単に覚えられるのに、生年月日を100人分覚えるのは非常に困難なのは、原始から「人の顔を見分けるのが生命にとって重要」だったからです。)
Eスポーツにおいても、例えば150ポイントの自己ベストを更新して152ポイントにすることが、どれくらい意味のある行為なのか人間の脳は直接理解できないわけです。
それを補うのが、
- あの人に勝ちたい
- あの人に認められたい
などの「他のプレイヤーとの相互評価関係」です。
こういった「脳がイメージしやすい報酬」があると、人間はモチベーションを維持できます。
他に、「上達や勝利以外のモチベーション」の存在もあり得ます。
本気で上達しようとしていなくても、全力で勝利を狙っていなくても、気心の知れた好きなメンバーで集まって遊ぶのは楽しいものです。
スポーツとして取り組んでいる以上、自分の上達を全く諦めた人はいないでしょうが、そういったストイックな要素以外で、単純に楽しいから続けているという人も多いです。
- プロの試合を見たり応援したりするのが楽しい
- みんなで集まるのが楽しい
- プレイ中やゲームが終わった後の仲間との交流が楽しい
- 仲良くなったメンバーと別の遊びやイベントをやるのが楽しい
など、スポーツ本体とは別の部分での楽しみがモチベーションになっていて、ある意味「ついで」にスポーツもやっているという人は、「ライトユーザー」などと呼ばれます。
こういった層が、スポーツ全体では非常に多いのも事実です。
Eスポーツにおける問題点とは
上記をまとめると、
- チームを組んで目標を持つ
- 一定人数以上と相互評価関係を築く
- ライトに楽しめるイベントに参加する
などが、フェーズ2のユーザーに必要な要素ということになります。
そして、分かると思いますがこれらはチーム競技であれば、基本的には自然と手に入るケースが多いです。
理由は、リアルのチームスポーツでは「育成環境に所属&適合してから⇒競技としてハマる」というルートが一般的だからですね。
私自身も、剣道を始めたのは習い事で近所の「剣道教室」に入ったからですし、ラクロスを始めたのは大学で「部活」に所属したからでした。
剣道では初段を取得しましたし、ラクロスは全国大会まで出場しました。
それに比べて、サッカーは小学生からずっと趣味でやっていましたが、友達と集まってボールを蹴っている程度で、「目標を持った」ことは一度もありません。やはり、受け皿となる育成環境に所属しないと「目標を持ってスポーツとして取り組む」という段階に進まないのがリアルスポーツの特徴です。
逆に、例えばラクロスをやっていたころには
- 自分自身の技術を高めたい、上達したい
という願望だけではなく、
- チームでリーグ突破して全国へ行きたい
- チーム内でレギュラー争いや負けたくない相手がいる
- 他校の有名プレイヤーやライバル関係の選手との対戦を楽しみにしている
- 飲み会や歓迎イベントなどサブイベントがたくさんある
など、育成環境内にすべての要素が含まれていました。
このように、リアルなスポーツでは育成環境が「育成(フェーズ1向けの要素)」だけではない、「長くスポーツとして取り組み続けられるような仕組み(フェーズ2向けの要素)」も兼ね備えている場合が多いです。
反転、Eスポーツではそもそも育成環境をスキップして1人でハマっていくというルートが一般的なので、フェーズ2向けの仕組みも全く整っていません。
さらに、下記のようなEスポーツならではの特徴が問題を複雑にしています。
チームを組むのが難しい
Eスポーツのタイトルごとに必要な人数は違いますが、ほとんどのゲームが
3~6人チーム制
に該当すると思います。
たった3人と思うかもしれませんが、Eスポーツは基本的にプレイヤーが自宅からオンラインで活動しているため、チームを結成するのは意外と難しいものです。
- 気が合うかどうか
- 実力がある程度揃っているかどうか
- 得意ポジションなどのバランスが良いか
- 活動時間帯が合うかどうか
などの様々な条件をクリアしないと、長く活動を続けられるようなチームになりません。
先にオフラインの育成環境に所属してからスタートするリアルスポーツなら、「チームに選手が合わせる」というのが基本ですが、先に選手がある程度1人で活動している上に、ネット上で薄い交流しかできないEスポーツでは、そもそもチームを結成する機会に恵まれなかったり、やっと結成しても条件が合わずにすぐに解散してしまったりするケースが多いのです。(さらに若年層が多いのも原因になっています)
- 心理的安全性が高く、かつ波長の合うチームができるまで何度も結成と解散のテストを繰り返せる環境
が無いと、安定したチームを組むことすら難しいというのがEスポーツの大きな特徴です。
チームで目標を持つのはもっと難しい
安定したチームを組むのすら難しいのに、さらに「チームで目標を持つ」のはもっと難しいのです。
理由は、大会をとりまとめている連盟や協会などが存在せず、さらに距離の概念が無いため世界中から大会に参加できてしまうからです。
リアルなスポーツなら、基本的にはプレイヤーはどこかのチームに所属していて、そしてそのチーム自体もどこかの連盟や協会が運営しているリーグに所属しています。
大雑把に言えば
- 全ての大会に明確な管理者が存在し
- かつ所属リーグ内での大会に参加が限定される
という2つの要素があり、これによってある程度の大会の安定化が実現しているので、どんなチームでも自分たちにあった適切な目標を描きやすくなっています。
(例えば中学校の部活なら中学生しか参加できない地区大会があるし、プロならプロリーグがあります)
しかし、Eスポーツの場合は上記の2つの要素はどちらも存在しません。
- 大会の管理者は個人のボランティアである場合がほとんどで
- かつ距離や所属概念が無く世界中から無差別に参加者が集まる
といういわゆる無法地帯のような状況です。
距離や所属リーグの制限がなく参加できてしまうため、1日中ゲームをやっているようなプロレベルの人があらゆる大会にエントリーしてしまい、
大会の1回戦は「地元の仲良し小学生4人組」と、「全員が1万時間以上プレイしているセミプロチーム」です
みたいなことが普通に起こっています。(もちろん、ほぼ1歩も動けずにワンサイドゲームになったりします)
こんな状態で、うまくチーム目標を描けるはずもありません。
実力で参加制限をかけようとする動きなどもありますが、実力の正確な計測自体が難しい上に、ネットの世界は身分証明もしづらいため、実用に至っていないのが現実です。
さらに、大会管理者の権力が弱いため、迷惑行為やルールのハック、クレーマーなどが横行しており、ボランティアの主催者を苦しめているケースも多いです。
- 参加チームのすそ野を広げつつ、すべてのチームが適切な目標を描けるようなリーグ制度や管理団体の設立
というのも、大きな課題となっています。
マジかよ・・・と思った方も多いかもしれませんが、リアルなスポーツで当たり前になっている
チームを組んで目標を持つ
というだけで、こんなにも大きなハードルがあるのがEスポーツ業界の現実なのです。
このように、中長期的に安定運営されている一定規模以上の大会やチーム、リーグなど、総称すると「所属できるコミュニティ」がほぼ存在しないため、当然ながら「ユーザー間の相互評価関係」を築くこともできません。
「ライトに楽しめるイベント」というのも、基本的には所属できるコミュニティがあってこそ発生するケースが多いので、「1人で有名プレイヤーのゲーム実況を見る」くらいしか無いのが現状です。
フェーズ2のユーザーの課題
フェーズ2についてまとめると、
- Eスポーツプレイヤーはオンラインのソロプレイが主軸であるため
- 大量の「記録とのレースにマンネリしたベテランユーザー」が発生するが
- オンラインでは質の高いコミュニティの長期運営や安定管理が難しいことが原因で
- 「自己満足型以外」の楽しみ方が不足している
という風に表現できます。
ある意味、チームEスポーツは
1人でハマれる・オンラインで気軽に楽しめる
というメリットによって、
プレイヤー人口を増やすところまでは良い
んだけど、メリットの裏返しで
- 初心者プレイヤーに必要な「育成環境」が無い
- ベテランプレイヤーに必要な「自己満足型以外の楽しみ方」も無い
というのが後からどんどん発生して、
続けていくほど辛くなっていく
ような環境になっていると言えます。
細かい部分はかなり省きましたが、以上がミクロ視点でのユーザーの課題やその原因となっている業界の特徴です。
2年間で私が試したことと結果
さて、上記のような課題は、私が2019年にアタリメフルボディーズ(AFB)というクラブチームを立ち上げてから、2年間に渡って様々な体験を繰り返してきたことによって発見されました。
ここからは、私がその学習の2年間において試したことや、その結果についてまとめます。以後の内容は全て、「スプラトゥーン」というゲームにおけるものです。
育成環境の構築
課題が明らかになる前から、「どう考えても育成環境が弱いだろう」というのは感じ取っていました。
というのも、自分が上達したくて色々と調べても、全然情報にすらヒットしなかったからです。
そのため、既に下記のようにいくつかの育成要素のあるテストは実施済みです。
攻略動画の提供
youtubeチャンネルを作って、攻略動画を100本程度作ってみました。
1年ほどで成果が出始めて、注目され始めた瞬間に1か月で1000とか2000とかチャンネル登録者が増えるようになり、そこから一瞬で6000人くらいまで伸びました。
コメント欄でも非常に好評で、なおかつ「この動画のお陰で上達できました」などの声もたくさんいただきました。
攻略動画は、「網羅性」と「体系化」というのを意識して作ってみましたが、需要が高いのを実感しました。
攻略サイトの提供
攻略サイトも遅れて制作しました。
こちらは、網羅性は低いですが圧倒的な体系化を意識して作ってみました。攻略というより、もはや専門書と呼べるレベルの記事(1記事で1万文字以上)をぶち込んであります。
このサイトは、記事数は少ないにも関わらず検索で一瞬でランキングしていき、安定してアクセスが入ってくるようになりました。
体系的な技術論が求められていることも、これで検証済みとなっています。
さらに、考察系の記事などライトなものもツイッターで300リツイートされるなど、非常に関心が高いのを実感しました。
攻略情報の交換所の開放
運営するチーム内では、攻略情報をユーザー同士で交換できるような場所も作ってみましたが、こちらに関しては「そもそも技術的な部分を分析したり分かりやすくまとめたりする」という行為自体を大部分のユーザーが自分でやらないため、あまり活性化することはありませんでした。
どちらかというと、「こんな情報あったよ」というような感じで、ツイッターで見つけてきたような小ネタなどを貼り付けるような用途で使用されるのがメインとなっています。
講習会の開催
同じくチーム内で、メンバーが有志で「講習会」や「勉強会」のような催しを何度も開催してくれていました。
あえて私が主催しないようにして様子を見てきましたが、「一定の需要はあるものの、そこまで強く求められていない」というのを感じました。
推測ですが、スポーツというのは結局のところ基礎より試合が一番楽しいものであり、基礎を飛ばして実戦から入ってしまうEスポーツというジャンルでは、後から基礎練習や勉強会を開催しようとしても、どうしても「実戦の楽しさ」が勝ってしまうのだと思います。
基礎練習場の開放
試合ではなく、基礎的なことを練習しやすいような場所を創ってユーザーに開放してみました。例えば「1on1をやる場所」などの「ここで●●練習をしましょう」的なやつです。
こちらも、同じように「一定の需要はあるものの、そこまで強く求められていない」という感覚で、非常に意識の高い一部の人間しか使用していない状況になりがちです。
講習会や基礎練習場のテストによって、「基礎をすっ飛ばして試合に出れてしまったメンバーを、後から基礎練習に自主的に参加させるのは非常に難しい」ということが分かりました。
上達したい(けど基礎とか面倒なことは極力やりたくない)
というのが大多数のユーザーの本音であり、オンライン上では強制力が乏しいため上記はそのままユーザーの行動に反映されてしまいます。
美味しいものだけ食べ放題のビュッフェで、良食をちゃんと食べられる人は健康意識が高い人だけです。それと同じですね。
マンツーマンでのプレイヤーの指導
私自身が特定のプレイヤーのマンツー指導も行ってみました。
ただ、正直に言って「指導することが多すぎる」ため、非常に気の長い上に効率の悪いやり方になりそうです。
理由は、体系的な指導理論が構築されていないからです。
指導というのは、樹木図のように技術の大きさや太さ、優先度と関係性が体系化されていて初めて効率が上がります。
それがないと、点でバラバラになっている技術を場当たり的に指導することになってしまい、指導する側もされる側も効率が悪くなってしまいます。
チーム単位でのコーチング指導
特定のチームに入って、コーチングを行うというテストも行ってみました。
まず、自分がプレイングコーチとして一緒にメンバーに入って、試合を通じてコーチングを行うというやり方をテストしました。
こちらは非常に効果的で、特に基礎が高いレベルに到達している選手は戦略や戦術の意味を理解すればすぐに実戦に反映させられるため、1時間だけのコーチングでも圧倒的に上達してくれました。
2週間程度、固定チームで活動したケースでは、チーム内の情報共有度が非常に高くなり、目覚ましい上達が見えました。
ただ、プレイングコーチは「体感した人しかメリットを感じづらい」ため、少し普及するのが難しそうです。
加えて、根本的な上達というよりは「戦術を落とし込んだ」というレベルに近く、一時的なドーピングに近いような部分も強かったように感じます。(応用力、汎用力などに欠ける)
それとは別で、自分が完全に外部メンバーとして客観的にコーチングしてみるというテストも行いました。
こちらも、プレイングコーチよりは時間がかかるものの、一定期間を経れば上達していくのが実感できました。ただ、やはり同じように「勝ち方をその場で体に覚えさせた」というのが限界で、根本的な上達に繋げるのは難しいように感じました。
「自分自身で考え、プレイを改善できるようになる選手の育成」という意味では、短期的な戦術コーチングでは実現できませんでした。
おそらくその部分は「習慣」に根付いた部分があると思います。
スポーツにおけるPDCAが当たり前になっているか?という習慣によって、プレイヤー間での個体差が出ている部分でしょう。
PDCAサイクルの設計と提供
ある程度技術が体系化できてきたタイミングで、
自分でプレイを改善していくためのPDCAの回し方
というのを設計して、提供してみました。
まだ技術理論の完成度が低いので精度が悪いですが、少なくともPD(プランを持ってから実戦に向かう)という部分だけでも、育成システムとして機能する可能性はあると感じます。
自己満足型以外の楽しみ方の提供
どちらかというと、私が2年間で重点を置いてテストしてきたのはこちらの方です。
- チームで目標を持つ
- 数字以外のイメージしやすい目標を持つ
- ライトに楽しめるイベントに参加する
などを通じて、「個人の上達を数字で追いかける」という「自己満足型」とは違った楽しみ方や目標などを提供するという方向性ですね。
ちなみに、なぜフェーズ1の人口が圧倒的に多く、かつ先に訪れる願望なのに、フェーズ1の初心者プレイヤーに必要な「育成環境」を優先せずに、どちらかというとフェーズ2のベテランプレイヤーにとって必要な要素に重点を置いてきたか?というのには理由があります。
理由1:技術が体系化できていなかったから
最も根本的な理由はこれで、前述しましたが指導や育成というのはどうしても
骨格骨子となる体系化された技術理論
というのが必要になります。
しかし、自分自身だけではなく、一定以上のサンプル数や成長の様子を見てからでないと、最低限の技術理論すら構築できません。
アタリメ団を設立した2019年の段階では、私自身もまだ1年程度のプレイ経験しか無く、自分自身がやっとフェーズ2に差し掛かるようなレベルでした。
せめて個人の体験談を抜け出し、もう少し広く深く大きな、つまり様々な視点でスプラトゥーンを競技として分析しないと、満足のいく育成環境は構築できないと判断したのです。
こちらに関しては、そこから2年で200名を超えるメンバーの成長や育成経験を経て、私の中でやっと基礎的な技術理論については整理することができました。
理由2:自己満足型を追求する育成システムは汎用性が低いから
Eスポーツ界隈での経験は浅い私ですが、指導や教育というジャンルでは10年以上の経験があります。
大学時代は70名を超える部活のキャプテンとヘッドコーチを務めましたし、独立してからはビジネスのコンサルタントとして数多くのフリーランスや起業家を育成してきました。
その経験から、「自分の成長や上達だけを追いかけさせる育成システムは、元から成長意欲が高い20%程度の人間にしか有効ではない」という結論が出ています。
これはスポーツでもビジネスでもあまり変わりなく、「自分だけのため」に「数字や結果を追い求める」というやり方は、残りの8割の人間にとっては苦痛の方が大きくなる(結果としてまじめに取り組まなくなる)傾向にあります。
シンプルに言えば、「ストイックに結果を追求し続けられない人の方が圧倒的に多い」のです。
成果を出せば実利の大きいビジネスですらそうなるのですから、ましてや趣味でやっている「頑張っても実利のないスポーツ」なら、なおさら上記が露見しがちです。
さらに、Eスポーツではここに「オンラインでいつでも離脱できる」という関係性の薄さが加わり、離脱や脱落率がさらに上がります。
つまり、Eスポーツにおける「育成環境」では、主にユーザーの「自分が上達したい」という願望に対してアプローチするものの、それだけだと「元からストイックな2割の人」しか成果を出せない環境になってしまうため、残りの「ストイックじゃない8割の人」のために「自己満足型以外の楽しみ方」も合わせて提供しなくてはいけない、という事になります。
私はオンラインでの育成サービスを多数運営してきた経験から、最初から上記をある程度予想していました。
そこで、育成サンプル数を増やしながら技術理論をコツコツ裏側で作りつつ、自己満足型以外の楽しみ方を提供する方法のテストとして、下記に列挙するような取り組みを行ってきました。
安定したチームを結成しやすい環境や仕組みの提供
最初に取り組んだのは、「チームを結成する」という楽しみ方です。
チームに所属すれば、自分の上達が誰かのためになったり、チーム内での交流や意見交換などの場が増えたりなど、自己満足型以外の楽しみ方が圧倒的に増えます。
そのために意識したのは、
- 心理的安全性の確保
- 結成と解散を嫌みなく繰り返せるルールや仕組み
の2つです。
心理的安全性の確保は、30歳以上のメンバーに限定したAFBというチームを創り、募集要項や先着順などのルールによって参加者を「成熟した大人の同世代で意欲的かつ積極的」なメンバーに厳選することで実現しました。
そして、AFB内で定期的に大会を開催し、大会に「個人でエントリー」すると、運営側が「勝手にチーム」を組んでくれて、1か月間の大会が終わった後には「必須で解散」するようなルールを設計しました。
これにより、大会にエントリーし続けるだけで、自動的に結成と解散が繰り返される仕様になり、さらに解散を義務付けているので「うまく波長が合わないチームは大義名分で解散」でき、「波長が合ったチームは勝手に裏側で活動が続く」という状況を創り出しました。
事実、そこで波長が合ったメンバーが見つかったり、息の合うチームになったりした場合には、その後も1年以上の長期に渡って活動を続けていくチームがいくつも出ました。
この仕様は、「安定したチームを結成する」というソリューション提供のために、非常に良く機能したと言えます。
逆に、
- 勝手にチームを自分たちで組んでからエントリーしてね
- 解散とかは特に必要ないよ
というパターンも試しました。
しかし、このパターンだと「既に仲良くなっている人がいる」「自分の実力に相当な自信がある」のどちらかに該当しないと、自分たちではチームを結成しない傾向があることが分かりました。
さらに、「チームを解散しよう」という風に全員が言い出しづらい雰囲気になりがちで、結果として活動していないけど形だけ残ってしまう「ゾンビチーム」も増える傾向にあります。
- 運営が勝手に結成した
- 大会後は解散がルールになっている
という2つの大義名分が無いと、結成も解散も捗らないため、結果として「安定したチームを結成しやすい」という状況は作れないようです。
全チームが適切な目標を持てるような環境や仕組みの提供
チームを結成するだけ・・・とはならないので、結成したチームで「何を目指して活動するか?」という目標の部分にも同時にアプローチしました。
私がメインで管理していないものも含みますが、大別すると
- チーム単位で優勝を競う期間限定の大会(アタリメ杯)
- チーム単位での勝敗と順位を競い合う常設の大会(アタリーグ・スプリーグ)
- チーム単位での勝敗と順位を競い合う期間限定の大会(シン★アタリメ杯・アタリメフェス)
- チーム単位でのパワーなどを競う常設のスコアランキング(リーグランキング)
という感じで、主に
- 常設 or 期間限定
- 優勝 or ランキング
の組み合わせを意識してテストしたり、結果を観察していきました。
正直に言って、この「全チームが適切な目標を持てる」という部分の達成が2年間で最も難しかったです。
結論から言うと、
- 期間限定で開催される
- トーナメントではなくリーグやランキングシステムで結果が出る
という組み合わせなら、「全チームが適切な目標を持てる」という状況に限りなく近づけそう・・・というところまでは見えてきました。
このように、「チームを組んで目標を持つ」という楽しみ方を提供するだけでも、
- チームの結成方法(運営ランダム・運営調整・自主結成・解散ありなし)
- 目標の設定方法(期間限定・常設・最終トーナメント・リーグ・トータルランキング)
の組み合わせが相当数あったため、検証に2年以上かかってしまいました。(大会を毎日やるわけにもいかないので・・・)
そのあたりの苦悩や試行錯誤は、こちらの記事にも記載しています。
現段階では、私の中で
- チームの結成方法:自主結成+運営ランダム・解散あり
- 目標の設定方法:期間限定・トータルランキング・エキシビジョン+個人賞+配信
という仕様までたどり着いています。こちらは結論まで至っておらず、今後も検証を続けていく必要があります。
ユーザー間でのライバル関係や師弟関係などの相互評価関係が発生する環境の提供
こちらに関しては、「一定期間以上に渡って同じ参加者が出場する大会」の運営を行うと、勝手にライバル関係が出来上がったり、同じポジションや武器の使用者同士で師弟関係が出来上がったりするのを確認しました。
AFB内では、前述してきたように定期大会を2年以上開催してきているため、
- あの人はこういうプレイが上手い
- あの人に大会でこんな風にやられた
- あの人に大会に向けて指導してもらった
などの相互評価関係が大量に発生しています。
ライトなイベントに参加できる機会の提供
こちらは、単純にコミュニティを安定的に運営していると、ユーザー間で様々な取り組みが行われていき、自然と達成できます。
- オフ会
- 飲み会
- 特殊なルールや縛りありのゲーム大会
- 大会の観戦
- 別ゲームを楽しむ会
などなど、AFB内でも自然発生的にたくさんのライトイベントが発生し、それぞれが参加しているような状況になりました。
現状の整理と今後の展望
さて、これで最終章です。
いったんここまでの話を簡単に整理します。
- Eスポーツの中でもチームPVPはめちゃくちゃ伸びしろがある
- チームEスポーツのプレイヤーは「遊んでるだけ(フェーズ0)⇒目標を持っている(フェーズ1)⇒目標が無くなった(フェーズ2)」の3つのフェーズに分類できる
- チームEスポーツは「チーム競技なのに1人でハマれる」ので、フェーズ1に「孤独な初心者プレイヤー」が大量発生してしまう
- 上記の構造問題に加え、「若年層の多さ・歴史の浅さ・更新性の高さ」の3つの要因が重なり、受け皿となれる育成機関が圧倒的に不足したままになっている(上達したいけど自力でできないプレイヤーに対してのソリューションがほぼ無い)
- さらにチームEスポーツは「チーム競技なのにオンラインのソロプレイが主軸になっている」ので、フェーズ2にも「自己記録とのレースにマンネリしたベテランユーザー」が大量に発生してしまう
- その問題の解決には「自己満足型以外の楽しみ方」が必要になるが、そのために必要な「コミュニティ(チーム、大会、リーグなど)」を長期運営したり、安定管理するのがオンラインだと難しいため、不足している(目標が無くなってしまったけど熱くなりたいプレイヤーに対してのソリューションが少ない)
- Eスポーツはリアルスポーツと違って入口の「プレイヤー人口」を増やしやすいが、そのメリットが裏返って「スポーツとしてハマるほど後の方で辛くなっていく(足りないものが多くなっていく)」という傾向がある
- 逆に言えば、数年でサッカーに追いつくような規模でプレイヤー人口を増やせるのに、後ろ側のソリューションが何もないという超ビッグブルーオーシャン状態である(課題を乗り越えてソリューションを提案できれば大きなチャンスがある)
ここまでが、チームEスポーツの業界で起こっている現象です。
そして、私はこの2年間で
- フェーズ1の孤独な初心者プレイヤーを救う方法
- フェーズ2の自己記録とのレースにマンネリしたベテランユーザーを救う方法
の両方において、大量のテストを行い、一定の結果を出してきました。
現状の課題点
簡単に言えば、大きく
- プレイヤーの育成
- 楽しみ方の多様化
の2つの方向性のソリューションが必要となっているわけです。
ですが、前述した通り
- 「プレイヤーの育成」のためには、「多様な楽しみ方の提案」も一部分必要になってくる
- これまでは「技術理論の体系化」が全くできていなかったので、本格的なプレイヤーの育成がそもそも実現できない状態だった
- 多様な楽しみ方の提案のうち、重要事項である「チームで目標を持つ」という部分が思っているよりも難易度が高かった
のもあって、どちらかというと「楽しみ方の多様化」に重みを振ったようなサービステストをしてきました。
それに加えて、フェーズ1で入ってきたユーザーたちが、「多様な楽しみ方」によるモチベーション効果で、具体的な育成要素が無くても2年間のうちにフェーズ2にどんどん移動していったのが重なり、結果として私が運営してきたアタリメフルボディーズというサービスが
- 業界全体で見れば、プレイヤー人口の9割以上がフェーズ1なのに、どちらかというと現在はフェーズ2向けのサービスになっている
- でも実際はどっちつかずの中途半端な状態なので価値がはっきりしていない
- 結果としてフェーズ1の人が入ってきてもバリューを受け取りづらい
という課題を抱えている状態になってしまっています。
しかし、2年間のテストを終えた今、ようやく
- 育成環境に必須と言える「技術理論の体系化」に目途が立った
- 本来はフェーズ2向けとは言え、フェーズ1にも必要になるであろう「多様な楽しみ方の提案方法」のゴールが見えてきた
ため、2021年度からは
- アタリメフルボディーズを明確にフェーズ1の人向けの「育成環境」と位置付ける
- 対象者を「上達したいけど自力ではできなくなった」「孤独な初心者プレイヤー」に定め、3の発売に向けて準備していく(基本的なニーズを「上達したい」に絞る)
- 技術理論をブラッシュアップしながら、育成環境のベースに据えていく
- スケールするために、育成をメインとしたシンプルなユースケース(サービスの使い方)に絞っていく
- 育成をメインとしつつも、「8割のストイックではないプレイヤー」のために、最低限の「多様な楽しみ方」は提供する
- 複雑化したユースケースやサーバーはスクラップしてゼロから再構築する
というリニューアル作業を行います。
それに伴い、課金方法や金額等も変更になる予定です。
上記が、現状の課題点と今後の展望でした。
詳細は、決まり次第公示していきます。
応援、よろしくお願いいたします。